ピヨピヨクラブ

ピヨピヨクラブ誕生の章

 

 

↓代わりに朗読しますョ(・ω・)↓

 

2008年7の月 青い芝生に白い点ひとつ。
それは水から離れ、干からびて死にかけていた
タイコウチであった。
彼を救うべく、水を貯めた水槽に解き放したあきと親子。
その瞬間、天の蟲神であるスカラベ(フンコロガシ)からの
お告げが、あきとの脳漿に広がっていった。

 

「いち早く水棲生物と気付き、水に放したお主たちの
知恵はたいしたものだ。」

 

実際は、図鑑と見比べながら1時間悩んだのだが・・・。

 

「このようになじみの薄い虫達も、
お主らが愚かな人間どもに知らしめていけば、
無駄に命を落とすことは無くなるかもしれぬ。」

 

なじみの薄い虫・・・はたして何万、いや何億種?

 

「啓蒙せよ!愚かな人間たちに気付かせるのじゃ!
この地球には無数の虫たちが棲息していることを。」

 

たかだかタイコウチ一匹救っただけでそんな大げさな。

 

「ではたのんだぞ。虫と地球の未来は
お主ら親子にかかっておる・・・」

 

あきとの脳漿に広がるスカラベの声は、そこで途絶えた。

 

「バカらしい。」
はじめはそう思っていた。
しかし、狭い水槽の中を懸命に泳ぎ、
お尻の管(呼吸管)でたまに息継ぎをする。
彼(タイコウチ)を眺めているうちに、
あきとの中にもある疑問が浮かんだ。
「コイツら、何を食べるんだ?」


再び、図鑑を繙いた。
「小魚に口吻を突き刺して体液を吸う」
道理で、金魚の餌を食べないはずだ。
このままでは、やせ細り死んでしまうかもしれない。

 

「やだ~ やだ~!」
泣いて拒む息子を尻目に、あきとはスカラベの
言葉を思い出した。

 

「なじみの薄い虫達も、
無駄に命を落とすことは無くなるかもしれぬ。」

 

俺自身知らなかったため、
このタイコウチも命を落としていたかもしれないではないか。


あきとは決意した。

 

タイコウチを水槽から野に放つことを。
そして、タイコウチをはじめとする、
私たち人間にとってなじみの薄い虫たちを、
この世に広く知らしめていくことを。

 

水槽から水田に捕えたタイコウチ放ち、あきとは考えた。
「いったいどうやれば・・・?」
虫研究の博士号はおろか、教員免許すらないあきと。
「さかなくん」のように
芸能プロダクションにも所属しておらず、今の立場でできることといったら・・・


今の立場といえば、かねてから、
アフリカン・パーカッション・チーム、ドンシャカピーポーで
ジャンベを叩いていたあきと。
一度でもその音を耳にしたものは皆、アフリカ民族音楽への
理解を深めていった。

 

「これだ・・・これしかない!」


2009年1月、かくして"虫"をコンセプトとしたアコースティック・バンド結成を思い立ち、 それに賛同した同志が集結した。
そして、タイコウチ、テントウムシ、ヤブキリと、
次々と虫ネタ曲を作っていった。

 

バンドでの初ライブ前夜。蟲の神、スカラベから
ふたたびお告げが。

 

「よくぞここまでこぎつけた。
しかしまだお前たちは、虫に関しては殻のついたヒヨッコじゃ。
神聖な"虫"の名を与えるわけにはいかぬ。
しばらくは"ピヨピヨクラブ"と名乗り、
研鑽をつみながら世に"虫"の世界を広めてゆくがよい。」


こうして、知られざる昆虫世界を世に広める使命を帯びた
"虫ネタアコポップ"バンド 「ピヨピヨクラブ」が誕生し、
第一声をあげた。2009年2月のことである。

 


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